これは、仕事や子どもたちのイベントが重なって、家を空ける時間が多かった一週間明けの、ある朝の出来事です。
その週は本当にバタバタで、気がつけば我が家のチワワをかまってあげる時間もほとんどなく、ゲージの中で過ごす時間が長くなっていました。
やっと少し落ち着いたある朝。
いつものようにゲージから出してあげると、なにやら様子がおかしい。
右の前足をかばうようにして、ビッコを引いている……。
「えっ、どうしたの?」
「足、痛いの?」
慌てて声をかけてみても、本人はいたって真顔。
前足をそっと触ってみても、とくに痛がる様子はありません。
でも、たしかにビッコを引いている。
止まっているときは、その右の前足をすっと浮かせている。
え、これって病院案件?
いやでも、触っても平気そうだし……。
でもやっぱり、足を上げてるし……。
そんなふうに、私の頭の中では
「大丈夫かな」
「いや、でも様子見でもいいかな」
「でもやっぱり病院かな」
が、朝からぐるぐる。
昼になっても変わらず。
夕方になっても変わらず。
右の前足をかばいながら歩き、止まると足を上げる。
そのたびにこちらの心配メーターはじわじわ上昇。
そしてついに、
「うん、やっぱり病院に行こう」
そう決めて準備を始めた、そのときでした。
玄関のドアが開いて、息子が帰宅。
すると次の瞬間――
さっきまで負傷犬だったはずの我が家のチワワ、
ものすごい勢いで息子のもとへダッシュ!
タタタタターッ!と、なんのためらいもなく一直線。
そして全身で「おかえりーーー!!!」を表現。
……え?
走ってるよね?
さっきまでの、あの慎重なビッコは?
右の前足をそっと上げる、あの切なげな姿は?
呆然としながら見ていた私が、
「え、足痛くないの?」
と声をかけると、こちらを見た我が家のチワワ。
そして、すっと前足を上げました。
今度は左足を。
いやいやいや。
さっき右だったよね?
なんで増えてるの。
むしろ悪化じゃなくて、設定ブレてるのよ。
そう思って見ていると、なんともいえない顔でじりっと後ずさり。
その姿を見た瞬間、もうおかしくて。
笑ってしまったのと同時に、胸の奥がちくっとしました。
ああ、かまってほしかったんだな。
寂しかったんだな。
ほんの一週間とはいえ、
家を空けることが多くて、
気づかないうちに我慢させてしまっていたのかもしれません。
まさか“仮病”まで使うなんて。
そう思うとクスッとしてしまうのに、
そんなふうにしか気持ちを伝えられなかったのかと思うと、
なんだか申し訳なくて。
その日の夜は、いつもよりたくさんなでて、たくさん話しかけて、たくさん一緒に過ごしました。
すると本人は、何事もなかったかのように、しっかり四本足でスタスタ。
……うん、やっぱりそうだよね。
でも、そんなちょっと不器用なアピールさえ愛おしいのが、犬と暮らす毎日。
そして忙しい日々の中でも、
「この子にとっての一番近くの存在でいたいな」と、あらためて思った出来事でした。

コメント